家賃滞納は何ヶ月で強制退去?
追い出されるまでの流れと止め方
「今月払えなかったら追い出されるのでは」という不安を抱えている方へ。結論から言うと、1〜2ヶ月の滞納でいきなり追い出されることは法律上ありません。 強制退去には裁判所の手続きが必須で、滞納開始から実際の強制執行までは平均5〜7ヶ月かかります。 そして、その間のどの段階でも「支払う意思を示して行動する」ことで流れを止められます。
まず知っておくべき3つの事実
- 法律に「◯ヶ月滞納で退去」という規定はなく、判例上「3ヶ月分程度以上」の滞納が契約解除の目安(信頼関係破壊の法理)
- 裁判なしの鍵交換・荷物処分・締め出しはすべて違法(自力救済の禁止)。契約書に特約があっても無効
- 判決前に滞納を解消するか和解が成立すれば、住み続けられる可能性が残る
強制退去までのタイムライン(標準的なケース)
各段階の「止めやすさ」に注目してください。早いほど選択肢が多く、費用も少なく済みます。
- 滞納 数日〜1ヶ月今すぐ止められる
電話・SMS・ハガキでの督促
保証会社や管理会社から電話・SMSで支払い確認の連絡が来ます。この段階は「引落し口座の残高不足かも」といううっかりミスを想定した丁寧な案内が中心です。折り返して支払日を伝えれば、それ以上は何も進みません。
- 滞納 1〜2ヶ月まだ十分止められる
書面での督促、緊急連絡先や職場への連絡
電話に出ない状態が続くと、督促状などの書面が自宅に届くようになります。それでも本人と連絡が取れない場合、契約書に記載した緊急連絡先や、場合によっては職場に「ご本人に連絡が取りたい」という趣旨の電話が入ることがあります(用件の詳細を第三者に明かすことは貸金業法・国交省ガイドラインで制限されています)。この段階までに折り返して支払計画を伝えれば、周囲への連絡は止められます。
- 滞納 2〜3ヶ月まだ止められる
連帯保証人への連絡・請求、代位弁済
連帯保証人がいる契約では、連帯保証人に支払いの請求が入ります。保証会社利用の物件では、保証会社が大家へ家賃を立て替え(代位弁済)し、以後は保証会社があなたに返済を求める形に変わります。立て替えられても「滞納した」という事実は消えない点に注意が必要です。この段階までに分割払いや支払計画を提案すれば、ほとんどのケースで法的手続きには進みません。
- 滞納 3ヶ月急いで動けばまだ止められる
自宅訪問、内容証明郵便による催告・契約解除通知
電話・書面に応答がないと、担当者が自宅を訪問して手紙を残していくことがあります(深夜の訪問や居座りは規制されています)。裁判実務では家賃3ヶ月分程度の滞納が「信頼関係破壊」の目安とされ、内容証明郵便で「期日までに支払わなければ契約を解除する」という通知が届きます。受取拒否しても法的には到達したとみなされるため、無視は不利になるだけです。この段階でも、滞納分を支払うか現実的な分割案で合意できれば訴訟は回避できます。
- 滞納 4〜5ヶ月和解での解決がまだ可能
建物明渡請求訴訟の提起
契約解除後も支払い・退去がない場合、裁判所に建物明渡請求訴訟が起こされ、自宅に訴状が届きます。最も重要なのは、指定期日に欠席しない(答弁書を出す)ことです。欠席すると大家側の主張を全て認めたことになり、最短で判決が出ます。出席して分割払いなどの和解案を出せば、「分割で支払いながら住み続ける」「自主退去と引き換えに滞納の一部免除」といった和解が成立するケースも少なくありません。
- 滞納 約6ヶ月〜止めるのは困難に
判決確定・強制執行の申立て
明渡しを命じる判決(債務名義)が確定すると、大家は強制執行を申し立てられます。申立てから執行官の「催告」まで約2週間、催告から実際の「断行」まで約4週間、合計1ヶ月半ほどです。催告の時点で退去期限が言い渡されるため、これが事実上の最終通告です。
- 断行日
強制執行(強制退去)
裁判所の執行官が物件を訪れ、家財道具を全て搬出して鍵を交換します。搬出された家財は業者に約1ヶ月保管され、引き取りには保管費用がかかります。執行費用も借主負担として後から請求されます。退去しても未払い家賃・遅延損害金・執行費用の支払い義務は残ります。
「信頼関係破壊の法理」とは — なぜ3ヶ月が目安なのか
賃貸借契約は生活の基盤に関わるため、借主は借地借家法などで強く保護されています。 大家が契約を解除するには、単なる債務不履行では足りず、「貸主と借主の信頼関係が破壊されたと言える程度の事情」が必要 — これが判例で確立された「信頼関係破壊の法理」です。
裁判実務では、家賃3ヶ月分程度以上の滞納が信頼関係破壊と判断される傾向にあります。 ただし機械的に決まるわけではなく、滞納の常習性、督促への対応(無視し続けたか、誠実に連絡したか)、 他の契約違反の有無なども総合的に考慮されます。逆に言えば、連絡を取り支払う意思を示し続けることが、法的にもあなたを守ります。
なお、保証会社が大家に家賃を立て替えて(代位弁済)いても、借主が支払っていない事実は変わらないため、 保証会社への未払いが3ヶ月続けば同じように契約解除の目安に達します。
こんな行為をされたら、それは違法です
裁判手続きを経ない実力行使は「自力救済の禁止」に反し、民事上違法・場合によっては刑事問題になります。 契約書に特約として書かれていても、その特約自体が無効です。
- 無断で部屋の鍵を交換して締め出す
- 室内の荷物を勝手に運び出す・処分する
- ドアに「出て行け」などの張り紙をする(名誉毀損の可能性)
- 深夜・早朝の督促、勤務先への執拗な取り立て
もし実行された場合は、法テラスや弁護士にすぐ相談してください。
各段階で流れを止める方法
訴状が届いた: 和解で止める
期日に必ず出席(または答弁書提出)し、分割払いの和解案を出します。この段階では弁護士・司法書士への相談が有効です。費用が不安でも法テラスの無料相談から始められます。
専門家への相談先を見る →よくある質問
Q. 退去すれば滞納分は払わなくてよくなりますか?
A. いいえ。退去後も未払い家賃・遅延損害金・(強制執行になった場合は)執行費用の支払い義務は残り、連帯保証人にも請求されます。金額が大きく返済が困難な場合は、債務整理で解決できる可能性があります。
Q. 生活保護を受ければ退去は防げますか?
A. これからの家賃は住宅扶助でカバーできますが、過去の滞納分の支払い義務は消えません。滞納分について大家と和解できるかが鍵になるため、ケースワーカーや弁護士に早めに相談してください。
Q. 強制退去になると次の部屋は借りられませんか?
A. 明渡訴訟で敗訴した履歴や保証会社の滞納情報は、次の入居審査に影響します。ただし保証会社の系統によって情報共有の範囲は異なります。詳しくは信用情報への影響のページをご覧ください。